大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 平成9年(ワ)20268号 判決

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一  請求

被告は、原告に対し、金二〇〇〇万円及びこれに対する平成九年一〇月一四日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

第二  事案の概要

本件は、原告が、株式会社旅ランド(本店所在地は大阪市。以下「旅ランド」という)から旅ランドが被告に対して有する債権を譲り受けた上、債務者対抗要件を具備したと主張して被告に対し右債権の支払を求めた事案である。被告は、既に右譲渡に係る債権は旅ランドに弁済済みであると主張しており、主要な争点は、(1) 旅ランドの被告に対する債権譲渡通知と被告の弁済の先後、(2) 右弁済が準占有者に対する弁済として有効となるかどうか、の二点である。

一  前提事実

1  原告は、航空運送業を営む株式会社である(争いがない)。

2  被告は、主に旅行の仲介斡旋業を営む有限会社である(争いがない)。

3  被告、旅ランド及び富士急トラベル株式会社(以下「富士急トラベル」という)は、平成八年六月一日、以下のとおりの内容の業務協定を締結し、その旨が記載された同日付業務協定書に調印した。旅ランドは、右の業務を同社東京支店において取り扱うこととしていた。

(一) 富士急トラベルは、富士急トラベルの主催商品「ジョイフルツアー」の企画、パンフレット作成、販売、運営、管理等の業務を委託し、旅ランドはこれを受託する。被告は、右ツアーが円滑に催行されるよう協力する。

(二) 約定の精算金の支払については、富士急トラベルは被告に対して、旅行代金締切月の翌々月末日の前日までに被告の指定する銀行口座に振り込んで支払い、被告は旅ランドに対して、富士急トラベルからの支払を確認後その翌日までに旅ランドの指定する銀行口座に振り込んで支払う。

4  旅ランドは、平成九年四月二五日現在、被告に対し前記業務協定に基づく精算金支払請求権(同年四月末日を支払期限とするもの)として一九四二万五九九一円の債権(以下「本件債権」という)を有していた。

5  原告と旅ランドは、原告が旅ランドに原告の航空券等の販売を委託し、旅ランドが原告に対して販売代金から委託手数料等を控除した残額を支払う旨の代理店契約を締結していた。平成九年四月二五日現在原告が旅ランドに対して有する右代理店契約に基づく債務の額は、三四六二万二四四六円であった。

6  原告と旅ランドは、平成九年四月二五日ころ、旅ランドの原告に対する前項記載の債務の一部を弁済するため本件債権を原告に譲渡する旨の契約を締結し、旅ランドは同月二八日到達の内容証明郵便で右債権譲渡の事実を被告に対して通知した(ただし、通知書には債権額を二〇〇〇万円と記載した。)。

7  被告は、平成九年四月二八日(本件通知到達と同日)、本件債権の額に相当する金額(ただし約定により弁済費用に係る振込手数料を控除したもの)をその弁済のために、旅ランドの銀行口座に対して振込送金した。

二  争点とこれに対する当事者の主張

1  本件通知と被告の弁済の先後

(一) 原告の主張

本件通知は、平成九年四月二八日の午前一一時から正午ころまでの間に被告に配達されたので、原告は遅くとも同日正午ころには本件債権譲渡の債務者対抗要件を具備した。被告が旅ランドに対する弁済のため本件振込送金手続をしたのは早くとも同日午後二時三〇分である。したがって、被告の旅ランドに対する弁済は、原告の対抗要件具備後になされたものであるから、本件債務を消滅させる効果を生じない。

(二) 被告の主張

本件通知が被告に到達したのは平成九年四月二八日午後一時三〇分以降のことであり、被告の従業員が本件振込送金手続を取ったのは同日午前一〇時ころのことである。したがって、被告は原告が本件債権譲渡の債務者対抗要件を具備する以前に弁済のための手続を済ませていたのであり、原告は本件債権譲渡を被告に対抗することができないから、本件債権は被告の弁済によって消滅している。

2  債権の準占有者に対する弁済

(一) 原告の主張

(1) 準占有者該当性

本件債権を原告に譲渡した後の旅ランドは民法四七八条にいう準占有者には当たらない。

同条の準占有者に当たるというためには、債権者としての外観を有することが必要であるが、債権譲渡契約後の債権譲渡人は債権の二重譲渡の場合における劣後譲受人と異なり、もはや債務者に対し弁済を促す行動をとらないから、債権者としての外観を喪失している。

また、同条の準占有者に当たるというためには、自己のためにする意思で債務者に対し債権を行使することが必要であるが、譲渡契約後の債権譲渡人は自己のために債権を占有する意思も失っている。

(2) 悪意、有過失

被告は本件債権譲渡の事実を知りつつ本件振込送金手続を行ったものであり、そうでないとしても、債権譲渡通知が被告に到達し、了知可能な状態に置かれていたにもかかわらず弁済を行ったことには過失がある。

よって、本件に民法四七八条を適用する余地はない。

(二) 被告の主張

(1) 指名債権が譲渡された後の譲渡人も、弁済すべき債務者から見ると債権者としての外観を有している場合があり、このように債権の譲渡人の内心の意思にかかわらず債務者から見て債権者らしい外観を有している者は債権の準占有者に当たると解すべきである。

(2) 被告は、旅ランドが本件債権を原告に譲渡した事実を知らず、知らないことに過失なく右債権を旅ランドに弁済したものであるから、旅ランドに対する弁済は準占有者に対する弁済として有効である。

第三  当裁判所の判断

一  <証拠略>及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる、

1  旅ランドは、資金繰りが悪化し、平成八年一二月の弁済期に原告に対する支払いができず若干の履行遅滞後に支払いをしたことがあり、平成九年三月三一日の弁済期分(同日中旬に販売した分一一〇九万九二四七円)及び同年四月一〇日の弁済期分(同年三月下旬に販売した分一三七六万八六〇二円)の履行を遅滞した。そこで、原告は、旅ランドを見限り、未収金の督促を行うようになり、旅ランドは原告の航空券の販売量を減少させるようになった。その一方で、旅ランドは、原告担当者に対して、他の小口の支払先への入金をストップすると小さな旅館がつぶれるので、原告は支払を待ってくれと説明していた。平成九年四月二三日までに、同月の三〇日までに弁済期の到来する旅ランドの原告に対する未払債務の額(同年三月中旬から四月中旬までの販売分)が三四六二万二四四六円となることが確定した。原告大阪支店の担当者本田は、原告本社法務部担当者と連絡をとり相談しながら、旅ランドからの債権回収に当たることとし、平成九年四月二五日(金曜日)、旅ランド本社において同社の高地代表取締役から平成八年六月一日付業務協定書に基づき被告に対して平成九年四月末日を弁済期とする二〇〇〇万円程度の債権(本件債権)を有することを聞き及び、高地に対して本件債権を原告に譲渡すること及び原告の作成した旅ランド作成名義の「平成八年六月一日付業務協定書に基づく債権二〇〇〇万円を原告に譲渡する。」旨の被告宛債権譲渡通知書に押印することを繰り返し強く要求した。高地は、同日、原告作成にかかる右債権譲渡通知書に旅ランドの代表取締役印を押印して原告担当者に預け、ここに本件債権譲渡契約が成立した。原告担当者は、翌平成九年四月二六日(土曜日)、右債権譲渡通知書を、原告のロゴマークと「全日本空輸株式会社大阪支店〒530大阪市北区《番地略》」という文字が印刷された原告の封筒に入れ、右印刷部分を細い横線で抹消し、封筒表の右下部分に「大阪市中央区《番地略》株式会社旅ランド代表取締役社長高地広樹」と手書きした上、大阪市中央郵便局において書留内容証明郵便として被告に宛てて発送した。右債権譲渡通知書は、同月二八日(月曜日)の正午ころ、被告本店事務所に配達された。

2  被告代表者は、ホテル業など旅行、観光関係の事業を営む複数の会社を経営しており、被告はそのうちの一社であった。被告は、その本店所在地においては代表者と従業員である佐藤和子の二名のみでその業務をこなしており、会社としての意思決定は被告代表者が行い、佐藤は被告代表者の指示に基づき各種の事務的な作業を遂行していた。

被告代表者は、佐藤に対して本件業務協定に基づき富士急トラベルから被告の銀行口座に入金があったときは速やかに旅ランドに対して所要額を電信扱いで振込送金するように指示しており、平成九年四月下旬にも、富士急トラベルから同月二八日に入金予定であるから、同日に富士急トラベルからの入金を確認次第旅ランドに対して一九四二万五九九一円(ただし振込手数料を控除)を振込送金するように予め指示していた。

平成九年四月二八日(月曜日)は、ゴールデンウィーク期間中であり前日二七日が日曜日で翌二九日も国民の祝日であったため、被告代表者の経営する長野県飯山市斑尾高原所在のホテルサンパティック斑尾は多忙を極め、被告代表者は、朝から一日中同ホテルに詰めており、同県中野市所在の被告本店事務所には夜遅く一度戻ったほかは不在であった。

3  平成九年四月二八日、富士急トラベルから電信扱いで振込送金された本件業務協定に基づく支払金が午前九時三二分に八十二銀行中野西支店の被告の預金口座に入金記帳され、佐藤もそのころ富士急トラベルの担当者から送金手続をした旨の電話連絡を受けた。そこで、佐藤は、同日午前一〇時過ぎころ、三和銀行なにわ筋支店の旅ランドの預金口座に所要額を電信扱いで送金するために八十二銀行中野西支店に赴き、被告代表者から予め受けていた指示に従い被告の預金口座から旅ランドの右預金口座に電信扱いで一九四二万五二五六円(振込手数料七三五円を控除した額)を送金することを依頼する旨の振込依頼書を同支店の窓口に提出し、他の用事をするためにいったん同支店から退出した。

4  同日正午ころ、原告のロゴマークの印刷された前記封筒に入れられた内容証明郵便が被告本店事務所に配達された。佐藤は、これを受領したが、開封しないまま被告代表者の机の上に置いた。

5  佐藤は、同日午後、再び八十二銀行中野西支店に赴き、午前中に依頼した旅ランド宛振込送金手続の書類を受け取った。八十二銀行中野西支店が三和銀行なにわ筋支店旅ランド口座宛の振込通知電文を発したのは、同日午後三時一六分であり、旅ランド口座に右振込送金の入金記帳がされたのはその後のことであると推定される。

6  原告社員田中和史(以下「田中」という)は、同日の夕方に、本件通知が被告に到達したことを確認すること及び四月三〇日には間違いなく旅ランドではなく原告に対して送金してもらうよう依頼することを目的として、被告に電話をかけた。応対した佐藤は、原告の封筒に入れられた旅ランドを差出名義人とする郵便物は同日被告に届いたが、同日既に旅ランドに対する振込送金手続を終了した旨回答し、田中の求めに応じて被告代表者の滞在場所であるホテルサンパティック斑尾の電話番号を教えた。

7  同日午後六時近くになって、田中は、ホテルサンパティック斑尾で仕事をしている被告代表者に電話し、本件通知を未だ見ていない被告代表者のために本件通知の写しを右ホテルに宛ててファクシミリで送信した。その際、被告代表者は、田中に対し、旅ランドへの振込送金手続は終了していると回答した。なお、原告と被告は、本件債権譲渡の問題が生じるまでは、取引上においてもそれ以外の関係においても、相互の具体的な接触関係はなかった。

8  旅ランドは、平成九年五月九日、被告に対して、「債権譲渡解除通知書」と題し、「債権者から詐害行為に当たるとの指摘を受けたので本件債権譲渡契約を解除する。」旨の記載のある内容証明郵便を発送し、右郵便はそのころ被告に到達した。旅ランドは、同年六月二四日、大阪地方裁判所において破産宣告を受けた。

二  なお、証人田中は、旅ランドの高地代表取締役は、原告社員に対して本件債権譲渡の翌日である平成九年四月二六日に「本日、被告代表者に対して本件債権譲渡を行ったことを知らせた」と述べ、被告代表者は田中との電話において右事実を自認した旨供述する。

しかしながら、旅ランドの高地代表取締役の発言内容に係る右供述は伝聞にすぎないこと、平成九年四月二八日の夕方に本件通知の写しが原告から被告代表者の滞在先であるホテルにファクシミリで送られたのは被告代表者が本件債権譲渡の事実を全く知らなかったからであるとみるのがより自然であること、被告代表者のような会社代表者が二重払いの危険を冒してまで原告に対して何らの確認も行わずに約二〇〇〇万円にのぼる多額の金額を支払ったというのは不自然な行為であること、被告代表者は一貫して反対趣旨の供述をしていることに照らし、右田中証言は採用の限りでない。

三  以上の認定事実を前提に争点について判断する。

1  争点1について

本件通知が被告本店事務所に配達され、被告代表者に了知可能となったのは、平成九年四月二八日正午ころであり、原告が債務者である被告に対する本件債権譲渡の対抗要件を具備したのも右の時点である。

佐藤の行った振込送金が三和銀行なにわ筋支店の旅ランドの預金口座に入金記帳されたのは、同日午後三時一六分より後のことであり、被告の旅ランドに対する弁済がされたのも右の入金記帳の時点であって、これが原告が本件債権譲渡の債務者対抗要件を具備した時点よりも後のことであることは明らかである。

よって、本件弁済が債権譲渡通知到達前(対抗要件具備前)にされたから、原告は本件債権譲渡を被告に対抗できない旨の被告の主張は理由がない。

2  争点2ついて

(一) 準占有者該当性

民法四七八条所定の債権の準占有者とは、本当は債権者ではないのにあたかも債権者であるかのような外観を有する者のことをいう。

本件のように、債務者に対して事前に相談ないし連絡をすることなく譲渡人と譲受人の間で債権譲渡契約が締結された場合においては、債権譲渡が真実有効に行われたという認識を債務者が現実に有するに至るまでの間は、右債務者に対する債権譲渡の対抗要件が具備された後であっても、なお、債権譲渡契約締結後の債権譲渡人は、債権の準占有者に当たるというべきである。したがって、旅ランドは、債権の準占有者に当たると解される。

原告は、ある者が債権の準占有者に当たるというためには、債権者としての外観及び債権を自己のために占有する意思を有することが必要であり、債権譲渡契約後の譲渡人はもはや債務者に弁済を促す行動をとらないから、債権者としての外観を失っており、自己のために占有する意思も失っているから、旅ランドは債権の準占有者には当たらないと主張する。ところで、準占有について定める民法二〇五条は、主として準占有者に帰属する効果について定めた規定であるから、自己のためにする意思を有することを準占有者に当たるというための要件と定めているものと解される。これに対して、債権の準占有者に対する弁済について定める民法四七八条は、準占有者に帰属する効果ではなく、準占有者に対して弁済をしようとする債務者が受ける効果について定めた規定であって、その制度趣旨は取引の安全の保護にあると解される。そうすると、債権の準占有者に当たるかどうかは、弁済をしようとする債務者から見た外観を基準として、取引通念に従って判断すべきであり、その者が債権者に弁済を促す行動をとることや自己のためにする意思を有することは債権の準占有者に当たるというための必須の要件ではないというべきである。このように解するのでなければ、債権譲渡通知が債務者の了知可能な状態になった直後に右譲渡通知を現実に了知することなく債権譲渡人に対する弁済をした債務者が不利益を受けるおそれがあり、民法四七八条の趣旨に反する結果を生じるものというべきである。

原告は、債務者対抗要件具備後の債権譲渡人に対する弁済により債務が消滅する余地を認めることは、債権譲渡についての対抗要件の制度を否定するに等しく、債務者が債権の譲受人に債権が帰属することを争えなくなっているにもかかわらず債権譲受人の犠牲の上に債務者を利するものであって、公平でないなどと主張する。しかしながら、債権譲渡がされた場合における債務者との間の関係における債権の帰属の問題は、債務者に対する通知又は債務者の承諾という債務者対抗要件の具備の時期により決すべきものであるが(民法四六七条一項)、右規定は債務者が行った弁済の効力についてまで定めているものとはいえず、その弁済の効力は債権の消滅に関する民法の規定を併せて考慮して決すべきである。すなわち、債権譲渡についての債務者対抗要件の規定(民法四六七条一項)は、債務者に対する関係において「債権の帰属する者」を定めるものにすぎず、これに対して、民法四七八条の規定は「債権の帰属しない者」に対する弁済により債務が消滅するという効果が発生するための要件を定めるものであるから、「債権の帰属しない者」である対抗要件具備後の債権譲渡人が債権の準占有者に当たるとする余地を認めることに格別問題はない。対抗要件具備後の債権譲渡人に対する弁済については、当該弁済が行われた個別具体的事情により、債務者が善意無過失といえる場合には債権の消滅という効果を発生させ、善意無過失とはいえない場合には債権の消滅という効果を発生させないことにより、債務者と債権の譲受人間の公平を図るのが、法律の趣旨であると解されるのである。

(二) 善意・無過失

本件は、債務者である被告が債権譲渡通知の内容を現実に了知する前に弁済のための電信振込送金手続を完了したという事案であること、被告は本店所在地においては代表者と従業員一名(佐藤)の二名により仕事をする小規模な会社であること、本件債権譲渡通知が被告に到達した平成九年四月二八日は、被告代表者にとって多忙なゴールデンウィーク期間中であって、被告代表者はホテル経営を業とする関連会社の仕事をするために日中は隣の飯山市所在のホテルサンパティック斑尾で一日中仕事をしており留守であったこと、本件電信振込送金手続は本件債権譲渡通知が封入された封書が配達されたちょうどその日にされたものであること、具体的には配達前の同日午前一〇時過ぎに銀行窓口に電信振込送金に必要な書類をすべて提出し、同日正午の配達の後に銀行から書類を受領し、同日午後三時一六分に銀行が振込通知電文を発信したこと、同日正午ころ配達された本件債権譲渡通知の封入された封書を直ちに開封して通知書を閲読した上被告代表者に速やかに連絡をすべき注意義務が佐藤にあったというには無理があり、佐藤が右封書を開封せず被告代表者に対する格別の連絡もせずに被告代表者の机の上に置いたままにしておいたことも被告程度の小規模会社においてはやむを得ないといえること、本件債権譲渡通知が被告に配達された事実を被告代表者が知った日時は被告が電信扱いによる振込送金手続を終えた後の同日午後六時ころであること、電信扱いによる振込送金手続を終えた後に右送金手続の取消等を試みようとしなかったこともやむを得ないと考えられることなどの事情によれば、被告の旅ランドに対する弁済は、本件債権の準占有者である旅ランドに対して善意無過失でなされたものであるというべきであり、民法四七八条により原告の請求に係る被告の債務は右弁済によって消滅したものと解される。

四  以上によれば、原告の請求は理由がない。

(裁判長裁判官 野山 宏 裁判官 高橋 譲 裁判官 新谷祐子)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例